保育園設計のポイント~給食室編~
保育園では離乳食やアレルギー対応食など様々な給食を作る必要があるため、家庭と同じキッチンの広さ・設備ではなく、専用設備の導入やスペースの確保等によって環境を整えることが大切です。
目 次
はじめに
保育と並んで、保育園が提供するとても大切なサービスに給食があります。
美味しい給食をたくさん食べることができる保育園は、子どもたちに人気となり、保育園に行くことが毎日楽しみになるでしょう。
また、保護者にとっても衛生的で栄養たっぷりの給食を提供してくれる保育園は、とてもありがたく、できるだけ子どもたちに長い期間通ってもらいたいと思っていただけるはずです。
美味しく、衛生的で、栄養豊かな給食を提供するには、調理を行う給食室にそれなりのスペース、備品、器具が必要です。
保育園は一律に同じ献立の給食というわけにはいかず、離乳段階に応じた離乳食(ミルクから徐々に移行するための食事)、アレルゲン(抗原)を除去したり代わりの食材で調理したアレルギー食、年齢に応じた大きさや柔らかさの給食を提供することが必要になります。
これらのさまざまな給食を、同時に、段取りよく、時間までに作らなければならないため、家庭のキッチンと同じ、というわけにはいきません。
ここでは、保育園の給食室を設計、建築する際の大切なポイントをご紹介します。
最初にやるべきこと
保育園の給食室を管轄、指導しているのは保健所です。
まずやるべきことは、保健所に保育園を開園する旨を伝え、給食室に必要な設備、備品を確認しましょう。
地域によって必要な設備、備品は多少異なりますが、手洗いの設置、ペーパータオルの利用、二つ以上のシンクの設置、食洗器(業務用が望ましい)や食器消毒保管庫(食器を熱消毒できる保管庫)を置くことは必須、と言われることが多いです。
※定員や利用されるお子さまの年齢、人数によって必要な調理室の広さ、設備等は異なります。
必要な面積
「何㎡以上でなければならない」といった給食室の面積基準はありませんが、アレルギー食や離乳食、一般食の調理、たくさんの食器への盛り付け、多くの食器やコップの洗浄を行うには、それなりのスペースが必要です。
参考として必要な面積をお伝えします。大型の保育園ならば、学校給食の広さ、レイアウトも参考にするとよいでしょう。
- 児童数が12名以下:一般住宅のキッチンよりも少し大きめの6畳程度、10㎡程度の広さ
- 児童数13名~30名:8畳程度、15㎡は必要
- 児童数31名~60名:12畳程度の21㎡
- 児童数61名~100名:14畳程度の25㎡
- 101名以上:18畳以上の32㎡以上
設計について
保育園の設計に精通していない建築士に丸投げすることは絶対に止めましょう。
住宅や店舗の設計しか行ったことがない建築士は、保健所に確認せず、住宅と同じ広さと設備の給食室を設計することがほとんどです。
そんな給食室を作ってしまうと、コンロの数が足りずに品数の多い給食が作れない、狭くて盛り付けが出来ない、手洗いがないので監査の度に指摘される、狭くてアレルギー食を作れないので対応できない、使いにくい給食室なので調理員がすぐに退職してしまう、というように保育園の運営ができなくなってしまいます。
保育所をいくつか設計し、保健所や自治体とのやり取りを重ね、実際に開園した実績のある建築士に依頼しましょう。
給食室の中のレイアウトは、建築士を通して厨房機器の専門メーカー(ホシザキなど)に依頼するとよいでしょう。広さや運営内容に見合った厨房機器、レイアウトを提案していただけます。
厨房機器
業務用の厨房機器は非常に高額です。
業務用冷凍冷蔵庫で30万円以上、食洗器で50万円以上もする場合があります。だからここは節約して家庭用で、、、と思いがちですが、業務用をお勧めします。
業務用をお勧めする一番の理由は、園児の人数によっては家庭用では業務にならない、容量が足りないためです。
家庭用食洗器を例に説明します。家庭用の食洗器は、大きいものでも家族6名分の食器しか洗うことができません。おまけに洗浄にとても時間がかかります。児童が何人もいる保育園では、1時間経っても、2時間経っても家庭用食洗器では洗い終えることができません。
業務用ならば、スピーディーにどんどん洗うことが可能です。耐久性も段違いに業務用に軍配が上がります。
冷凍冷蔵庫も園児の人数によっては家庭用では容量が足りません。また、家庭用だと、必要な庫内の温度表示もなく、冷凍温度も不十分です。
食洗器、冷凍冷蔵庫など、家庭用で代用すると業務に支障をきたしてしまいます。
以下の厨房機器は業務用をお勧めします。
業務用にしたい厨房機器
- 食洗器
- 冷凍冷蔵庫
- 炊飯器(園児の人数が多い場合。その場合は、離乳食用に家庭用もあるとよい)
- コンロ(電気またはガスで最低でも4口以上)
- 食器消毒保管庫
- 検査用保存食用ストッカー(直近2週間分の給食サンプルの保管義務あり)
- 鍋、フライパン、おたま、食器など
→家庭用ではなく耐久性のある業務用を最初から購入することで、結果的に費用を抑えることにつながります。 - (スチーム)コンベクションオーブン
→園児が多い園では家庭用オーブンではなく、熱循環のよい業務用のオーブンがおすすめです。
そのほか注意すべきポイント
調乳スペース
0歳児用の調乳(ミルクを作ること)を給食室で行うことは、児童20名まで(うち0歳児6名まで)ならば対応できるかもしれませんが、それ以上の児童数の保育園では、給食室での調乳対応は止めた方がよいでしょう。
給食を作りながらミルクも作ることは、調理員にとって大きな負担となります。児童21名以上(うち0歳児7名以上)の保育園の場合は、0歳児室に隣接した場所に調乳室を設置しましょう。
給食室で調乳を行う場合には、哺乳瓶の殺菌保管庫、ポットなどのスペースも設計段階で見込んでおきましょう。
ごみ箱、消火器の設置スペース
給食室のレイアウトで見逃されがちなのが、ごみ箱の設置スペース、消火器の設置スペースです。
設計時にこのスペースを確保しておかないと、びっしりすき間なく厨房機器が並んできるおかげで、ごみ箱も消火器も置くことができなくなります。
いつも調理の動線上にごみ箱や消火器が置いてあって邪魔になり、結局保育園の廊下にまではみ出す、といったことになりかねません。給食室のごみ箱はかなり大きめの90リットルサイズで2つ設置する、という場合もあります。しっかり事前に想定しておきましょう。
空調設備
空調は必ず設置しましょう。給食室は常に火を扱い、湯気が立ち込め、室内温度は非常に高くなります。空調がない夏場の給食室は50℃を超えることもあり、調理員の健康を脅かします。
6畳の給食室に6畳用の空調ではまったく役に立ちません。20畳用、30畳用でようやく涼しくなります。大型の保育園ならば専用の空調を設置し、快適な職場環境を整えましょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
定員や利用されるお子さまの年齢、人数によって必要な調理室の広さ、設備等は異なるため、判断が難しいところもありますが、こちらの記事を参考に給食室を設計いたただけますと幸いです。
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